唇が乾燥する原因とケア

突然ですが、皆さんは最近口紅を使っていますか?在宅勤務やマスク着用などといったコロナ感染対策が続く中、口紅を使わなくなったという声が多く聞かれます。実際、化粧品の中でも、口紅の売り上げが大幅に減ってきています。
このような、メイクアップ習慣に変化が出ている中、マスクによって、顔が肌荒れしている人、特に唇の荒れが気になる人も増えています。人に見られることがないから口紅を使わなくても、お手入れを怠ると、顔の中でも特にデリケートな唇は荒れていってしまいます。
今回は、意外と知られていない唇と皮膚の違いから、魅力的な唇を保つケア方法までを説明します。

唇の構造と性状

まずは、唇とはどんなものなのか?私たちが普段「くちびる」と呼んでいる部位について、図とともに解説します。
唇は、鼻・あご・頬に接し、上の鼻唇溝(びしんこう)から下は頤(おとがい)唇溝までの部位で構成されており、たくさんの筋肉で支えられています。その動きは顔面神経によって支配され、表情をつくり出すなど、複雑で多様な動きをしています。そして、一般に「くちびる」と呼び、口紅やリップクリームを塗る部位は、「赤唇縁(せきしんえん)」というものです。また、くちびるの表面に走る多数の溝は赤唇溝(せきしんこう)と呼ばれ、唇の動きに柔軟に対応しています1)

                                            

唇(=赤唇縁)と皮膚の違い

唇は、口腔粘膜と皮膚の境界に位置する中間部分であるため、粘膜と皮膚の両方の性質を持っています。どちらかといえば粘膜に近い性質で、顔の皮膚に比べて角質層が非常に薄く、ターンオーバーが速く、汗腺や皮脂腺がなく、皮脂膜やNMF(天然保湿因子)が少ないので、角質層の水分量が少なく乾燥しやすいということがわかっています。また、一般的な皮膚と違い、毛もなく、メラノサイト(色素細胞)もほとんどないため、紫外線の影響を受けやすい部位です。
つまり、顔の中における皮膚と比べて、唇はデリケートであり、基本的に荒れやすい器官といえます。

○皮脂線がない
○角質層が極めて薄く、ターンオーバーが早い(3~4日)
○天然保湿因子(NMF)が少ない
○経表皮水分蒸散量が多い
○メラノサイトがほとんどなく、紫外線防御機能が弱い

ターンオーバーと呼ばれる、肌の新陳代謝、肌の生まれ変わりの速度は体の部位や年齢、性別によって異なります。文献によっても異なりますが、およそ28日~56日程度と言われています。この皮膚のターンオーバー速度に対し、唇は3倍から4倍の速度で上皮層が新しく入れ替わり、長くとも1週間から10日で全て入れ替わるという報告があります。つまり、デリケートで荒れやすい一方で、傷めても修復が早いということでもあります。

マスクで唇が荒れるのか?

さて、マスク生活と唇の荒れの関係に話を戻しましょう。
マスクをつけて呼吸することで、マスクの内側に水分が溜まってきて不快感を覚えたことはありませんか?
このマスクにこもった水分が吸収されずに残り、唇や肌に付着して蒸発するとき、一緒に角質層から水分を奪ってしまいます。このことが、乾燥や荒れの原因のひとつです。
さらに、長時間マスクを交換しないでつけたままにしておくと、中で雑菌が繁殖してしまいます。これらの雑菌もまた、肌荒れ、唇の荒れを引き起こす要因といえます。そして、マスクそのものが皮膚や唇に触れて擦れることも、物理的な刺激となり、皮膚や唇のトラブルを引き起こします。

唇のケア

唇のターンオーバーは、皮膚に比べると非常に速いサイクルだという説明をしましたが、デリケートで角質層が乱れやすく、特に乾燥しやすい環境や季節では、荒れやすい一方で、逆にきちんとケアさえしてあげれば、皮膚よりも早く健康な状態にすることができるとも言えます。
唇の荒れが気になるときには、こまめにうるおいを与え、乾燥から守ってあげましょう。また、ついついやってしまいがちな、くちびるを舐めるという行為は、むしろさらなる乾燥を招くことにつながりますので、保湿のためにはリップクリームやバームなどで水分蒸散を防ぐよう心掛けましょう。

プラスアドバイス

プールや海で、体が冷えてしまい、唇が紫色になってしまったという経験はありませんか? 冷えは代謝を滞らせて、唇の色を悪くさせます。唇を健康的な色に保ちたいのであれば、胃腸やおなか、腰などを温めれば、体全体の代謝が良くなるので、唇の血色感がアップするはずです。また、ふっくらツヤツヤのためには、皮膚や粘膜を健康にするビタミンB2を多く含む、レバーやほうれん草、卵、納豆などを積極的にとることも、体の内側からのケアとしておすすめです。

冬は、冷たい風や暖房などで、肌だけでなく、唇も乾燥しやすい季節です。唇に合ったケアを欠かさず、いつでも口紅が美しく映える唇をキープしましょう。

参考文献
1) 竹原祥子, 下山和弘: 口唇と頬の構造と機能訓練, 老年歯学, 21.vol.4: 403~406, 2007.